貸したお金が返ってこないときの手順|借用書なし・時効・請求の進め方

最終更新:2026-08-03

個人間で貸したお金は、貸した事実を示す証拠の整理 → 書面での催告 → 裁判所の手続き(支払督促・少額訴訟・通常訴訟)→ 強制執行、という順で請求します。借用書がなくても、振込記録やメッセージのやり取りで貸したことを示せれば請求できます。2020年4月1日以降に貸したお金の消滅時効は、返済期日を知った時から5年です。

借用書がなくてもお金は返してもらえる?

答え

借用書がなくても請求はできます。大切なのは「お金を渡した事実」と「返す約束だった事実」の両方を示せることです。銀行振込の記録や、返済の約束が読み取れるメッセージのやり取りが残っていれば、それらが証拠になります。

現金を手渡ししていて記録が何も残っていない場合は立証が難しくなります。まずは、貸したときと返済を求めたときのやり取りを、時系列で拾い集めることから始めます。

どんな証拠を集めればいい?

答え

「いくらを、いつ、誰に渡し、いつ返す約束だったか」を示せる資料を集めます。振込明細・借用書や念書・LINEやメールのやり取り・返済の一部があればその記録、の4点が揃っていると、その後どの手続きに進んでも通用します。

  • 銀行の振込明細や通帳の記録(渡した日付と金額が分かるもの)
  • 借用書・念書・覚書(金額と返済期日が書かれていれば有力な証拠になります)
  • 貸し借りや返済の約束が読み取れるLINE・メール・SMSのやり取り
  • 相手が一部でも返済した記録(残高の計算根拠になります)

相手が「返す」「あといくら残っている」と認めているメッセージは特に重要です。債務の承認があると、その時点から時効が新たに進行します(民法152条)。スクリーンショットは日付が分かる形で保存します。

貸したお金の時効は何年?

答え

2020年4月1日以降に貸したお金は、返済期日など権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年のいずれか早い方で時効になります(民法166条)。返済期日を決めていた個人間の貸金では、実務上その期日から5年が目安になります。

消滅時効の起算点(2020年4月1日以降に生じた債権)
区分期間起算点
主観的起算点5年権利を行使できることを知った時
客観的起算点10年権利を行使できる時

2020年3月31日以前に貸したお金は、改正前の民法により原則10年で時効になります。いつ貸したかによって適用される規定が変わる点に注意します。

利息や遅延損害金は請求できる?

答え

利息を取る約束をしていなかった個人間の貸金は、原則として返済期日までの利息はつきません(民法589条1項)。ただし返済期日を過ぎた後は、期日の翌日から遅延損害金を請求できます。約束した利率がなければ、法定利率(2020年4月時点で年3%。3年ごとに見直される変動制)で計算します(民法404条・419条)。

借用書に利息や遅延損害金の利率が書かれている場合は、その利率が優先されます。利率を書面で定めているかどうかで、請求できる金額の計算方法が変わります。

内容証明で催告するとどうなる?

答え

支払いを求める催告をすると、その時から6か月間は時効の完成が猶予されます(民法150条)。ただし猶予は繰り返せません。期間中に支払督促や訴訟などの裁判上の請求をしなければ、時効はそのまま完成します。

催告そのものに支払いを強制する力はありませんが、「いつ・いくらを、誰に請求したか」を記録に残せるため、その後の手続きで請求の存在を示す資料になります。相手に「本気で回収する」という意思を伝える意味もあります。

裁判所の手続きはどれを選べばいい?

答え

相手が金額を争ってこない見込みなら支払督促、60万円以下で早く判決がほしいなら少額訴訟、金額が大きい・争いがある場合は通常訴訟、という整理になります。手数料は支払督促が最も安く、訴訟の半額です。

3つの手続きの違い
手続き対象特徴
支払督促金銭の給付請求(金額の上限なし)書類審査のみ。相手が異議を出すと通常訴訟へ移行する
少額訴訟60万円以下の金銭請求原則1回の期日で審理を終え、その日に判決が出る
通常訴訟金額の上限なし争いのある事件を本格的に審理する。期間は長くなる

少額訴訟は同じ簡易裁判所で年10回までという制限があります。回数を超える場合は通常訴訟を選びます。

判決が出ても払わない相手からはどう回収する?

答え

確定した判決や仮執行宣言付支払督促があれば、裁判所に強制執行を申し立てられます。ただし裁判所が相手の財産を探してくれるわけではないため、差し押さえる財産をこちらで特定する必要があります。

  • 給与債権の差押え(相手の勤務先を把握している場合)
  • 預貯金債権の差押え(金融機関名と支店を特定する必要があります)
  • 動産・不動産の差押え

相手の財産が分からない場合に備えて、民事執行法には財産開示手続や第三者からの情報取得手続が用意されています。回収の実効性は、最終的に相手に財産があるかどうかで決まります。

よくある質問

Q.借用書を作っていなくても請求できますか?
A.借用書は貸した事実を示す資料の一つであり、借用書がないと請求できないわけではありません。振込記録やメッセージのやり取りなど、他の資料で貸したことと返す約束だったことを立証することになります。
Q.友人や親族に貸したお金でも同じ手続きが使えますか?
A.使えます。相手が友人・知人・親族のいずれであっても、支払督促・少額訴訟・通常訴訟の使い分けが変わることはありません。証拠の集め方も同じです。
Q.相手が「もう少し待って」と言い続けている間に時効になりませんか?
A.相手が支払いを猶予してほしいと述べたり残額を認めたりすることは債務の承認にあたることが多く、その時点から時効が新たに進行します(民法152条)。やり取りの日付を記録に残しておきます。

出典

  1. [1]民法(第166条 消滅時効/第150条 催告/第152条 承認/第404条 法定利率/第419条 金銭債務の特則/第589条 利息)e-Gov法令検索(デジタル庁)
  2. [2]支払督促(手続の概要・申立先)裁判所
  3. [3]少額訴訟(手続の概要・60万円以下の要件)裁判所
  4. [4]民事訴訟(通常訴訟の手続の概要)裁判所
  5. [5]手数料(申立てにかかる手数料の額)裁判所
  6. [6]内容証明(サービス内容)日本郵便

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