判決が出ても払われないとき|強制執行の流れと費用
最終更新:2026-07-28
強制執行は、判決などで確定した権利を裁判所の手を借りて実現する手続きです。申立てには債務名義・執行文・送達証明書の3点が必要で、給与や預金といった債権を差し押さえる場合は相手方の住所地を管轄する地方裁判所に申し立てます。
強制執行を始めるには何が必要?
債務名義、執行文、送達証明書の3点がそろって初めて申し立てられます。債務名義は「相手にいくら払わせる権利があるか」を公に確定した書面で、確定判決や仮執行宣言付支払督促がこれにあたります。
- 債務名義(確定判決、仮執行宣言付判決、仮執行宣言付支払督促、和解調書、調停調書、強制執行認諾文言付きの公正証書など)
- 執行文(債務名義に「これで強制執行してよい」と付記してもらうもの)
- 送達証明書(債務名義が相手方に送達されたことの証明)
少額訴訟の確定判決、仮執行宣言付少額訴訟判決、仮執行宣言付支払督促については、執行文の付与が不要とされています(民事執行法25条ただし書)。
何を差し押さえられる?
差押えの対象は、大きく債権執行・不動産執行・動産執行の3つに分かれます。実務で使われることが多いのは、給与や預貯金を対象にする債権執行です。
| 種類 | 対象の例 | 申立先 |
|---|---|---|
| 債権執行 | 預貯金、給与、売掛金 | 相手方の住所地を管轄する地方裁判所 |
| 不動産執行 | 土地、建物 | 不動産の所在地を管轄する地方裁判所 |
| 動産執行 | 現金、店舗内の商品 | 所在地を管轄する地方裁判所の執行官 |
どこに何があるかは、申し立てる側が特定して書きます。預貯金なら金融機関名と支店名まで、給与なら勤務先の名称と所在地までを書く必要があり、裁判所が代わりに探してくれるわけではありません。
給与を差し押さえるといくら取れる?
給与は全額を差し押さえられるわけではありません。原則として、税金や社会保険料を引いた手取り額の4分の3は差押えが禁止され、差し押さえられるのは残りの4分の1です。
ただし手取りが月33万円を超える場合は、33万円を超える部分は全額が差押えの対象になります。また、養育費や婚姻費用を請求する場合の上限は2分の1に広がります。
差押禁止の範囲は民事執行法152条と同法施行令2条によるものです。金額の基準は政令で定められており、改正されることがあります。
相手の財産が分からないときは?
財産開示手続と、第三者からの情報取得手続という2つの制度があります。どちらも債務名義を持っていることが前提で、裁判所を通じて相手方の財産を調べるための手続きです。
- 1
財産開示手続を申し立てる
相手方本人を裁判所に呼び出し、自分の財産を陳述させる手続きです。正当な理由なく出頭しない、虚偽の陳述をするといった場合には罰則が定められています。
- 2
第三者からの情報取得手続を申し立てる
金融機関や市町村、年金機構などに対し、裁判所から預貯金や勤務先の情報を照会してもらう手続きです。財産開示手続を先に経ることが必要な場合があります。
- 3
得られた情報で差押えを申し立てる
判明した口座や勤務先を特定して、債権差押命令を申し立てます。
強制執行にかかる費用は?
債権執行の申立手数料は、債務名義1通につき4,000円の収入印紙です。このほかに、裁判所から書類を送るための郵便料金を予納します。
不動産執行や動産執行では、手続きを進めるための費用を予納金として先に納める必要があり、債権執行より負担が大きくなります。どの方法を選ぶかは、回収が見込める金額と費用を見比べて決めることになります。
手数料の額は民事訴訟費用等に関する法律の別表第一に定められています。予納する郵便料金の額は裁判所ごとに異なるため、申立先に確認します。
よくある質問
- Q.強制執行の前に、もう一度支払いを求めたほうがよいですか?
- A.判決後に任意の支払いを求めること自体は妨げられません。強制執行には手数料と手間がかかるため、先に振込を促す通知を出してから申し立てる進め方もあります。
- Q.差押えをしても相手にお金がなかったらどうなりますか?
- A.差し押さえた口座に残高がなければ回収はできません。債務名義そのものは残るため、後日あらためて別の財産に対して申し立てることができます。
- Q.債務名義の効力はいつまで続きますか?
- A.確定判決で確定した権利の消滅時効は10年とされています(民法169条1項)。期間が経過する前に、あらためて手続きを取る必要があります。
出典
- [1]民事執行(手続の種類・申立先)裁判所
- [2]債権執行(債務名義に基づく差押え)裁判所
- [3]財産開示手続裁判所
- [4]第三者からの情報取得手続裁判所
- [5]民事執行手続で使う書式裁判所
- [6]民事執行法(第22条 債務名義/第25条 執行文/第152条 差押禁止債権)e-Gov法令検索(デジタル庁)
- [7]民事訴訟費用等に関する法律(別表第一 手数料の算定)e-Gov法令検索(デジタル庁)
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