売掛金が回収できないときの手順|時効・催告・裁判所の手続き

最終更新:2026-07-28

売掛金の回収は、取引記録の整理 → 書面での催告 → 裁判所の手続き(支払督促・少額訴訟・通常訴訟)→ 強制執行、という順で進みます。2020年4月1日以降に発生した債権の消滅時効は、権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年のいずれか早い方です。

回収に入る前に何を揃えればいい?

答え

「いくらの債権が、いつ発生し、いつ支払期日を迎えたか」を書類で示せる状態にすることが先です。契約書・発注書・納品書・請求書・入金記録の5点が揃っていれば、その後どの手続きに進んでも通用します。

  • 基本契約書、個別契約書、注文書・注文請書
  • 納品書、検収書、作業完了報告書
  • 請求書(発行日・支払期日・金額が分かるもの)
  • 入金記録(一部入金がある場合は残高の計算根拠になります)
  • 支払いの遅れについてのメール・チャットのやり取り

相手が支払いを一部でも認めている書面やメッセージは重要です。債務の承認があると、その時点から時効が新たに進行します(民法152条)。

売掛金の時効は何年?

答え

2020年4月1日以降に生じた債権は、権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年のいずれか早い方で時効になります(民法166条)。改正前にあった「売掛金は2年」といった短期の時効はなくなりました。

時効の起算点
区分期間起算点
主観的起算点5年権利を行使できることを知った時
客観的起算点10年権利を行使できる時

通常の取引では請求書の支払期日に「権利を行使できることを知った」と評価されることが多く、実務上は支払期日から5年が目安になります。

内容証明で催告するとどうなる?

答え

支払いを求める催告をすると、その時から6か月間は時効の完成が猶予されます(民法150条)。ただし猶予は繰り返せません。期間中に裁判上の請求などをしなければ、時効はそのまま完成します。

催告そのものに支払いを強制する力はありませんが、「いつ・いくらを請求したか」が記録に残るため、その後の手続きで請求の存在を示す資料になります。時効が近い債権では、猶予される6か月の意味が大きくなります。

裁判所の手続きはどれを選べばいい?

答え

相手が争ってこない見込みなら支払督促、60万円以下で早く判決がほしいなら少額訴訟、金額が大きい・争いがある場合は通常訴訟、という整理になります。手数料は支払督促が最も安く、訴訟の半額です。

3つの手続きの違い
手続き対象特徴
支払督促金銭等の給付請求(金額の上限なし)書類審査のみ。相手が異議を出すと通常訴訟へ移行する
少額訴訟60万円以下の金銭請求原則1回の期日で審理を終え、その日に判決が出る
通常訴訟金額の上限なし争いのある事件を本格的に審理する。期間は長くなる

判決が出ても払わない相手からはどう回収する?

答え

確定した判決や仮執行宣言付支払督促があれば、裁判所に強制執行を申し立てられます。ただし裁判所が相手の財産を探してくれるわけではないため、差し押さえる財産をこちらで特定する必要があります。

  • 預貯金債権の差押え(金融機関名と支店を特定する必要があります)
  • 売掛金債権の差押え(相手のさらに取引先を把握している場合)
  • 動産・不動産の差押え

相手の財産が分からない場合に備えて、民事執行法には財産開示手続や第三者からの情報取得手続が用意されています。回収の実効性は、最終的に相手に財産があるかどうかで決まります。

次の取引で同じことを繰り返さないためには?

答え

支払期日・遅延損害金・支払方法を契約書に明記し、納品と検収の記録を毎回残すことです。書面が整っている取引ほど、回収の手続きは短く済みます。

  • 契約書に支払期日と遅延損害金の利率を書く
  • 発注はメールなど記録の残る方法で受ける
  • 納品時に検収の記録(受領書やメールの返信)を残す
  • 入金遅れが出た時点で書面で督促し、記録を残す

よくある質問

Q.相手が支払いを一部だけしてきた場合、時効はどうなりますか?
A.一部の支払いは債務の承認にあたることが多く、その時点から時効が新たに進行します(民法152条)。承認があった日付は記録に残しておきます。
Q.取引先が個人事業主でも同じ手続きが使えますか?
A.使えます。相手が法人か個人事業主かで、支払督促・少額訴訟・通常訴訟の使い分けが変わることはありません。
Q.請求書を出していなくても請求できますか?
A.請求書は債権の存在を示す資料の一つであり、請求書がないと請求できないわけではありません。契約書や納品の記録など、他の資料で立証することになります。

出典

  1. [1]民法(第166条 消滅時効/第150条 催告/第152条 承認/第404条 法定利率)e-Gov法令検索(デジタル庁)
  2. [2]支払督促(手続の概要・申立先)裁判所
  3. [3]少額訴訟(手続の概要・60万円以下の要件)裁判所
  4. [4]民事訴訟(通常訴訟の手続の概要)裁判所
  5. [5]手数料(申立てにかかる手数料の額)裁判所
  6. [6]内容証明(サービス内容)日本郵便

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